04

NGKストーリー

07 幾多の試練を超えて事業化されたハニセラム

ハニカム型触媒担体のハニセラム。その礎となったのは、ガイシ事業の技術的蓄積の下、ハニカム事業を何としてでも事業化していくとの執念、品質確保に向けた研究所と生産現場での粘り強い取り組みであった。

日本メーカーから買うつもりはない

「会ってはくれるし、話も聞いてくれる。でも、『排ガス規制対応のための重要な自動車部品を海外メーカーから買うつもりはないよ』という態度がありありでした」と振り返るのは1973年ごろからフォード通いをしていた営業担当である。当社は1970年代以降、自動車の排ガス浄化用の触媒担体としてハニカム型のセラミックス(ハニセラム)の研究を重ね、1974(昭和49)年からサンプル出荷を開始していた。しかし、当時世界最大の自動車メーカーは自動車排ガス用触媒装置にペレット型の触媒担体を採用しており、日本の自動車メーカーもそれに倣っていた。事態を打開するため、ハニカム型の採用を検討していた異なる自動車メーカーにサンプルを送り、営業担当が足繁く通っていたのである。「海外メーカーから買う気はない」という態度の背景には、すでにハニカム型の部品メーカーとしていくつもの候補が挙がっていたからだった。

ところが1975年1月、当社に100万個の値段と納期の照会が寄せられたのである。第1候補を除く他社のサンプルが基準をクリアできなかったのだ。
早速、デトロイトのフォードに向け、評価用サンプルが航空便で送られた。

デトロイトから届いた試験結果

しかし、1975(昭和50)年12月12日に届いたフォードの試験結果は惨憺(さんたん)たるものだった。熱衝撃試験で6個中4個が壊れてしまったというのだ。もちろんこれでは交渉を先に進めることはできない。

研究所で耐熱衝撃性を高めるための取り組みが始まった。議論を重ね、原料を粉砕し、土練機にかけて成形、乾燥から焼成、サンプルの評価。年末年始の休暇を返上して、翌年1月12日、新しい素地が完成、ただちにサンプルをフォードに送った。

試験結果を待っていた3月、フォードが生産技術の確認のために来日した。当社の生産能力の高さをアピールするために案内したのが全長130mのトンネル窯。均質なセラミックスを焼成し、大量生産できることを熱心に説いた。

4月9日、フォードから試験結果を受け取った営業担当は、ニューヨークのオフィスから日本に一行のテレックスを送信した。「Test Results Excellent & Perfect」。たった一行だったが、休暇返上で取り組んだ苦労が報われた瞬間だった。

この試験結果と日本での工場見学を踏まえ、当社への発注が決定した。

量産によって収益化できるとの確信

1976(昭和51)年3月に発足していたプロジェクトによる事業化が始まった。

製造を担当したのはガイシ事業部で、月産3万個の体制でスタートした。だが、問題があった。「何年も先の需要が読める電力業界と比べ、自動車業界はせいぜい月単位でしか読めない。発想の転換、意識の切り替えが必要でした」(プロジェクトメンバー)。

次は価格交渉である。量産開始前ではどうしても製造原価が高くなってしまう。そこで決断したのは、はじめは赤字でも、受注・量産対応によって事業を収益化するとの策である。かつてない英断だったが、これにより交渉がまとまり、量産化が加速した。

1976年4月、本社工場の一角でハニセラム専用工場の建設に着手し、同年12月から出荷を開始した。

初期のハニセラム

ハニセラムの耐熱衝撃試験

ハニカム事業を成功に導いたもの

1977(昭和52)年10月に生産個数は月産12万個に達し、ハニセラムの薄壁化の要望にも研究所挙げての取り組みによりほぼ達成し、製造技術の開発にも目処をつけた。その後は採用する自動車メーカーが増えていき、生産工場も国内に加え、欧州、米国、インドネシア、南アフリカ、中国、ポーランド、メキシコ、タイへと広がり、当社の主力事業へと育っている。

1970年代に始まって1980年代に大きく花開いたハニカム事業だが、そのベースはガイシ事業であった。「ガイシ事業の伝統を生かしつつ、ハニカム事業を何としてでも事業化していくとの執念、品質確保に向けた研究所と生産現場での粘り強い取り組み、そして量産による収益化への確信、どの一つが欠けてもハニカム事業の成功はなかったでしょう」というのはハニセラムを事業化に導いた関係者たちの一致した見解だろう。

薄壁化したハニセラム

ハニセラム製品

ハニセラム生産第1号記念と重要科学技術史資料の登録証

ハニセラムのグローバル生産体制

1

NGKセラミックスヨーロッパ

2

NGKセラミックスポーランド

3

NGKセラミックスサウスアフリカ

4

NGK蘇州環保陶瓷

5

石川工場

6

NGKセラミックスタイランド

7

AC工場

8

NGKセラミックスインドネシア

9

NGKセラミックスUSA

10

NGKセラミックスメキシコ