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NGKストーリー

03 変わり続けながら変わらないものを追求してきたグローバル展開

森村ブラザーズ以来のDNAを受け継いだ当社の海外展開。ガイシの輸出から始まった海外展開はガイシやハニセラムの現地生産となって拡大していった。拠点がグローバルに広がる中、柔軟に変わり続けるものと不変の考え方を追求してきたのが当社のグローバル展開であった。

森村ブラザーズ以来の海外展開のDNA

森村兄弟の弟・豊が1876(明治9)年に共同出資の日之出商会、2年後に単独出資での日之出商会モリムラ・ブラザース(のちにモリムラ・ブラザーズと改称)を開設して以来、海外志向は森村グループのDNAとして当社にも受け継がれた。1930年代には北米で市場調査を行い、1935(昭和10)年にはインド政庁から初の海外輸出である2万個の懸垂ガイシを受注した。そして、1965年にNGKアメリカ(現NGK-Locke)、1968年にNGKカナダを設立し、北米向けガイシの輸出を強化。ニュージーランドや西ドイツ(当時)への輸出にも成功している。そして1970年代にはロックガイシにて現地生産を開始した。

森村豊/モリムラ・ブラザース(明治16年ころ)

ロックガイシが受けた強烈な洗礼

それは当社にとっては初めてと言っていい強烈な洗礼だった。1973(昭和48)年に米国GE社との合弁で設立されたロックガイシは深刻な経営難に陥っていた。その一つに硬直化した労使関係があり、生産性の向上を妨げていた。経営の再建のために改善に努めたものの、2度にわたるストライキに見舞われるなど困難をきわめた。しかし、そうした状況の中にあっても当社は技術移転による品質の改善や製品の多様化、権限の現地委譲の促進など経営再建の手を緩めることはなかった。その後は徐々に労使関係の改善が進み、経営環境も改善され業績も伸長。米国の中でも有数のガイシメーカーとなった。

ゼロから立ち上げたNGKセラミックスヨーロッパ

一方で、欧州への直接進出を目指し、1976(昭和51)年に販売拠点のNGKヨーロッパ(ハンブルク)を設立。1977年にはベルギーのMNPB社を買収してNGKボドゥールを設立し、ガイシ生産を始めた。一方でACハニカムの需要拡大に伴い、1985年、ベルギーにNGKセラミックスヨーロッパ(ACE)を設立した。

ロックガイシやNGKボドゥールが現地企業を買収したのに対し、ACEは当社にとって初の、自前での海外生産拠点の建設となった。土地の買収、工場建設、生産準備などすべてを自社で進めた。風土や習慣が大きく異なる中で多くの困難は伴ったが、1988年に操業を開始。そして、すぐさま第2、第3の設備投資を実施し需要拡大に応えた。

NGKセラミックスヨーロッパ

世界各国に広がる現地生産ネットワーク

ハニセラム生産における日米欧の最適生産分担の方針から1988(昭和63)年にNGKセラミックスUSAを設立した。そして、欧州同様に追加の設備投資が行われ、生産能力を増強した。ハニセラムはその後、インドネシアや南アフリカ、中国、ポーランド、メキシコ、そしてタイへと生産拠点が広がり、マーケットに近いところで生産する消費地立地を進めグローバルな生産体制を構築、拡大している。NGKセラミックスポーランド(ACP)の拡大は顕著で、2005(平成17)年からSiC製ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)の量産開始以降、大型ハニセラムとDPFの生産能力を次々と増強し、2013年にNOxセンサー、2016年にはガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)の生産を開始した。さらに2014年にNOxセンサーの第2組立ライン、2017年にはSiC製DPF増産のために第2工場を建設するなど、当社の海外事業を代表する拠点に成長した。

電力事業の現地生産拠点も広がった。インドネシアにウィカNGKガイシ、オーストラリアのNGKスタンガー、米国のNGKロックポリマーインシュレーターズ、中国のNGK唐山電瓷とインドのビルラNGK、中国の NGK(蘇州)電瓷を設立し、さらに産業プロセス事業では中国のNGK(蘇州)熱工技術有限公司、タイのサイアムNGKテクノセラ、金属事業では米国のNGKメタルズ、フランスのNGKベリルコフランス、HPC事業では米国のFMインダストリーズを設立した。

グローバル生産ネットワーク

1

FMインダストリーズ

2

NGKセラミックスメキシコ

3

NGKメタルズ

4

NGKセラミックスUSA

5

NGKロックポリマーインシュレーターズ

6

NGKベリルコフランス

7

NGKセラミックスヨーロッパ

8

NGKセラミックスポーランド

9

NGKセラミックスサウスアフリカ

10

サイアムNGKテクノセラ

11

NGK蘇州熱工技術

12

NGK蘇州環保陶瓷

13

NGK唐山電瓷

14

日本ガイシ

15

NGKセラミックスインドネシア

16

NGKスタンガー

変えるべきことと変えてはならないこと

かつての海外進出の目的は国家への貢献や外貨の獲得であった。それに対して1970年代以降は為替リスクの低減や現地調達への対応などめまぐるしく移り変わる経済情勢へも対応した。例えば、中国市場における電力用がいし需要の伸び悩みや競合激化からのNGK蘇州解散など事業の再構築である。事業を通した社会貢献という使命を継続していくためには避けられないと判断した。

事業の形態を柔軟に変えていく一方で「変えてはならないもの」も一貫して追求してきた。それが創立100周年を機に制定したNGKグループ理念にうたわれている「社会に新しい価値を そして、幸せを」との考えである。環境変化に合わせた事業形態という変えるべきものがあり、一方で企業の使命や価値観という変えてはならないものがあり、いずれも追求されなくてはいけない。当社のグローバル展開にはこの姿勢が貫かれている。